執筆力を高めるための読書の仕方を解説。好きな作家の技術を分析し、自分の作品に取り入れるための意識的な読書法と実践方法を紹介します。
はじめに
「良い文章を書きたければ、たくさん読め」
執筆者の間では、よく言われる言葉です。
でも、ただ読むだけでは、執筆技術は向上しません。「書き手として読む」という、意識的なアプローチが必要です。
本記事では、読書から執筆技術を効果的に学ぶ方法を紹介します。
読者として読むことと書き手として読むことの違い
読者として読む: 物語に没入し、結末が気になり、ページをめくる。
書き手として読む: 「なぜここで感情が動いたのか」「この場面はどう構成されているか」「この表現はどう機能しているか」を分析しながら読む。
両方のモードが大切です。「書き手として読む」だけでは、読書の楽しみが失われます。
おすすめは、まず「読者として」読み、2回目以降に「書き手として」読み返すことです。
書き手として注目すること
1. 冒頭の構造
「なぜこの本の冒頭は続きを読みたくなるのか」を分析します。
- 謎を提示しているか
- 強烈なキャラクターが登場しているか
- 緊張感から始まっているか
- 特異な状況が描かれているか
冒頭の構造を分析することで、自分の作品の冒頭設計に応用できます。
2. テンポの変化
「この場面はなぜゆっくり感じるのか」「このシーンはなぜ疾走感があるのか」を意識します。
- 短い文が続いている→速くなる
- 長い描写が続いている→遅くなる
- 対話が多い→軽快に感じる
- 地の文が多い→重く感じる
意図的なテンポコントロールを学ぶことで、自分の文章にも応用できます。
3. セリフのリズム
上手い会話文は、リズムがあります。
「誰のセリフか」「セリフと地の文の割合」「セリフ間のテンポ」——これらを意識して読むと、自分の会話文の設計に役立ちます。
4. 情報の出し方
「なぜここでこの情報を出したのか」を考えます。
物語の中で、情報(登場人物の過去、世界観の設定、重要な事実)をどのタイミングで開示するかは、緊張感と驚きに直結します。
うまく情報を管理している作品を読む時、「なぜここで」を意識してみましょう。
5. 感情の動かし方
「なぜこの場面で涙が出るのか」「なぜここが怖いのか」を分析します。
感情は、直接的な説明では動きません。何かの「仕掛け」があるはずです。
- 感情移入できるキャラクターに何かが起きている
- 長い緊張の後に、安堵が来る
- 意外な情報が明かされる
感情が動いた場面を分析することで、感情を動かす技術を学べます。
実践:分析ノートをつける
読んだ作品で「良い」と感じた部分を、メモします。
例:
1【○○(作品名)第3章より】
2・主人公の父親が突然現れる場面
3・なぜ感動したか:父親が「お前のことが心配だった」と言わず、
4 「バカだな」とだけ言う場面。セリフに感情が詰まっている。
5・自分への応用:感情は言葉で言わせず、態度や言動で示す
このメモが積み重なることで、「感情を動かす技術のリスト」が出来上がります。
書いてんかのアイデアボードを、このような分析メモの記録場所として使うことができます。
どんな本を読むべきか
これは人によります。ただ、いくつかの観点から選ぶと良いかもしれません。
自分が書きたいジャンルの代表作: 自分の目標とするジャンルのベストセラー・名作を読むことは、そのジャンルの「文法」を学ぶことになります。
自分が苦手とする技術が優れた作品: 描写が苦手なら描写の上手い作品、会話が苦手なら会話文の優れた作品を選びます。
全く別ジャンルの作品: 自分がいつも読まないジャンルから、意外な技術や発想を学べることがあります。
まとめ
読書から執筆技術を学ぶためのポイント:
- 「書き手として読む」モードを持つ:分析しながら読む
- 冒頭・テンポ・セリフ・情報の出し方・感情の動かし方に注目する
- 分析メモをつける:気づいたことを記録して、自分の技術に変える
- 幅広いジャンルを読む:異ジャンルから意外な学びを得る
読書と執筆は、切り離せない関係にあります。書くことで読書の見え方が変わり、読むことで書く力が変わります。